8月3日(木)/晴・29℃

湘南地方にも、やっと夏らしい夏が訪れました。
まだ、オホーツク高気圧が優勢で、乾いた爽やかな風が吹きぬけ、蝉の声もあの木立から降リ注ぐような蝉時雨とはいきませんが、それでも充分に夏の風情が感じられます。明日あたりから、猛暑と共に本格的な夏が到来することでしょう。
今年の梅雨明けは、例年にないパターンでした。
通常なら、梅雨前線を高温多湿の太平洋高気圧が北へ押し上げ、うだるような猛暑が梅雨明けのシグナルでしたが、今年は、オホーツク高気圧が前線を南東へ押しやって関東地方の梅雨が明けました。従って、ここ数日続いたように、湿度が低い爽やかな風を送り込み、気温も30℃を下回る夏の到来だった訳です。

梅雨明けが宣言された7月31日、江ノ島ヨットクラブの「セーラビリティー江ノ島」では、障害児にヨット体験をしていただくクルージングをしました。舟は、松本代表の所有する「みなも」という40フィートを上回るオールド・タイプのクルーザーで、いつもの二人乗りの小舟ではありません。私にとっては、ディンギーより遥かに手馴れたクルーザー・ヨットですから、朝から気持ちが弾みます。
出航の準備が整った10時頃、10数人の障害児とその保護者がやってきました。未経験なクルーズに対する尻込みがあるとはいえ、それを上回る期待感でウキウキしているのが見て取れます。こわばっていた表情も、デッキに腰をすえて暫くすると笑顔に変ってきます。
さて、いよいよ出航です。舫い綱を解き、大きな図体の「みなも」が狭い港内をゆっくり進みだすと、言葉にならない感歎の声が上がります。
マリーナを囲む堤防を出て、目の前に広々とした海原が拓けると、さっきまでの尻込みも忘れたように、子供たちは揺れるデッキを恐るおそる動き回ります。
「みなも」が安全な水域に出ると、松本代表は、「舵をとって、ヨットを動かしてみたい子はここにおいで」と、コックピットから子供たちに声を掛けます。早速、何人かが交代で舵をとりました。大きなヨットが、たくさんの人を乗せて、広い海原を自分が操る舵のとおりに右に左に方向をかえながら走ります。感動で子供たちの目が輝いています。
七里ガ浜の遥か沖を南下し、やがて鎌倉海岸沖にやって来ました。遠くの海岸に、大勢の海水浴客が豆粒のように見えます。
「目の前が逗子マリーナ、さらに先が葉山ですよ」 「左の岬は稲村ガ崎です」 「葉山のはるか先に、白いチョークのように見えるのが、裕次郎灯台ですよ」と説明すると、保護者の方々も目を見張ってクルージングの爽快感に酔っていらっしゃるようでした。

とはいうものの、私自身、オーストラリアで航海をリタイアして以来初のクルーズです。血管の中を駆け巡る潮気たっぷりの血潮が、私本来の海に対する熱い想いを突き上げます。まだまだ私の感性に見合った壮大な海とはいえませんが、それでも、「海に帰って来た!」という胸を締め付けるような感動が湧き上がってきます。今回は、舵にもセールを調整するシートにも触れず、もっぱら障害児とその保護者のお世話だけに徹しましたが、このささやかなクルーズで、私の中に、「私の海」が鮮やかに甦っていました。
帰港の途次、普通は見ることのない江ノ島の裏側(海側)に接近しました。高く切り立った崖に、龍神を祀った祠がいくつも見えます。午後になって、少し風が吹き上がってきたようです。海言葉で「ウサギが跳ぶ」といいますが、海面に波頭が崩れる白波が見えます。フル・セールに帆を揚げると、ヨットは生き返ったように走り出す風です。またいつの日か、海原を我がもの顔に疾駆することがあるだろうか・・・・・・かつて海を見据えて描いた夢が、再び私の眼前に甦るかも知れません。

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