2005/8/5 金曜日

8月4日(木)・晴れ時々曇り・32℃

カテゴリー: 未分類 — zen @ 3:29:11

ひどい暑さが続いております。
熱中症、熱射病、紫外線被害など、最近は注意を払うべき項目が矢鱈と増えていますが、大過なく猛暑の季節をお過ごしになられるよう暑中お見舞いを申し上げます。

先日、私の作品『癌』を読んで下さった方からお便りをいただきました。
その一部を転写させていただくと、「癌の匂いは確かにあります。消化器の癌で死ぬ人、見つかる人は同じ匂いがします」というものでした。
これは、作品の『癌』の中で、主人公の「私」が結核病棟での入院経験から、それぞれの病気には固有の匂いがあると確信します。そして或る日、自らの口臭の中に癌で死んだ叔父と同じ匂いを感じ、癌に侵されていることを知るという箇所があります。さらに「専門の医師の方には一笑にふされるかも知れませんが・・・」という言い訳めいた文章が続いている訳です。
このメールを下さった方は、北海道で医師をされている方です。多分、私の文中の危惧を気遣って、癌には固有の匂いがあることを教えて下さったのだと思います。早速、感謝の気持をお伝えすべくお礼のメールを発信しておきました。
私のようなアマチュアの物書きは、プロの作家のように様々な考証や取材に時間や人手や経費をつぎ込むことは不可能です。自らが経験や見聞で蓄えた知識、書籍などの文献、それでも不十分な場合は、せいぜい図書館に馳せ参じるのが関の山です。
私などは感性で書き通してしまう方ですから、書き上がって後、作品の記述に重大な誤謬がないか、ちょっとした専門知識などでとんでもない過ちを犯してはいないかと、いつも気にかかります。ですから、確信が乏しい部分を補強し元気づけて下さるメールは本当にうれしいものです。

それにしても、或る程度の期間継続した観察とは凄いものだと、我が事ながら感心してしまいます。
私も、作品に登場する匂坂という青年(実在)も、病気に固有の匂いがあるなんて先入観は皆無でした。それなのに、変動が少ない或る状況を一年間以上も観察し続けると、そこに一定のリズムのように法則めいたものが見えてきました。それが、聞いたこともない「結核病棟固有の匂い」であり、やがてそれは「結核菌の匂い」という私たちの共通認識になっていった訳です。
結核菌に固有の匂いがあるのなら、癌にだって固有の匂いがあるはずではないか・・・そう考え、それを物語りに綴ったのは私の感性です。しかし、感性で書き流したものには不安が残ります。書きながら、専門の医師から「何を馬鹿なことを言っているか!」とお叱りを受けるのではないかとビクビクしながら書いた当時を思い出します。
海の天気は地元の漁師に聞けといいます。毎日、不変の地形に兆す気象的な微妙な変化を、何年も、何十年も眺め、いや、旧い言い伝えも含めれば何百年も観察し続けてきた確かさなのです。それが天気の変化のみならず、複雑な潮流の変化や波の立ち方の予測にまで及ぶことに、私たちヨット乗りは、いつも驚かされます。
観察の継続は、時には専門の学術的知識を凌駕します。逆の方向からいえば、アカデミックな知識を導き出すためには、のんびりと何年間も観察している余裕がないという箇所が泣き所なのかも知れません。科学が証明出来ない現象は幻想に過ぎないという人がいますが、それはとんでもない科学過信という迷信です。
旧い言い伝えや村の古老が語り継ぐ伝承などに、永い歳月にわたる観察の精華が導き出した計り知れない真実が潜んでいます。そうした知恵に敬意を抱き、大切にしてゆきたいものです。

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